Asagi's Art News
ミズマ ~ ジパング展 ― 2011年06月05日 23時06分29秒
ジパング展の公式サイトには、「日本の現代美術の魅力を世界に向けて発信する。日本人自身にもその魅力を再認識して欲しい」と書かれています。ジパング展のキュレーターでもあるミズマギャラリーの三潴末雄の想いが込められたメッセージです。地震や原発などの問題を抱えながらも、その解決の糸口が日本の持つ独自の文化にあるのだというメッセージと思っています。
現代アートのアプローチはさまざまであり、単に日本独自の文化に目を向ける必要はありません。しかし、過去の偉業を残したアーティストが、回帰して作品に取り込んだのも日本独自の文化だったのです。過去数千年の美の継承があったからこそ、いまの日本文化があるのだと思います。日本人以外には真似ができないこと、それがオリジナルであり世界の求めることなのかもしれません。
ミズマギャラリーで扱う作品は、社会に対して一席を投げるアーティストもたくさんいます。圧倒的な人気を誇る会田誠(1965-)などは、社会の抱える矛盾に疑問を投げかけています。子供を守るための規制を求めながら、美少女などとあおり立てる商品を売買している社会に対して作品を通して問いかけます。
今回の展覧会では、『大山椒魚』が展示されています。この作品は、日本画をベースにしたとても美しい作品です。しかし、この絵をどのように解釈するかで、社会の矛盾やタブーに気がついてしまいます。さまざまな意図しない解釈でも可能になるような作品なのかもしれません。
会田誠「大山椒魚、2003」
参加している31人のアーティストの個性はかなり強いですが、それを束ねている三潴という人物もなかなかおもしろい人のようです。さまざまメディアを巧みに操りながら、したたかに想いを発信していくさまは、アーティストの個性以上に魅力があります。トップギャラリーであるミズマには、今後ますますの注目をしていきたいと思います。
※日本橋高島屋8階ホール(2011年 6月1日~ 2011年6月20日)
現代アートのアプローチはさまざまであり、単に日本独自の文化に目を向ける必要はありません。しかし、過去の偉業を残したアーティストが、回帰して作品に取り込んだのも日本独自の文化だったのです。過去数千年の美の継承があったからこそ、いまの日本文化があるのだと思います。日本人以外には真似ができないこと、それがオリジナルであり世界の求めることなのかもしれません。
ミズマギャラリーで扱う作品は、社会に対して一席を投げるアーティストもたくさんいます。圧倒的な人気を誇る会田誠(1965-)などは、社会の抱える矛盾に疑問を投げかけています。子供を守るための規制を求めながら、美少女などとあおり立てる商品を売買している社会に対して作品を通して問いかけます。
今回の展覧会では、『大山椒魚』が展示されています。この作品は、日本画をベースにしたとても美しい作品です。しかし、この絵をどのように解釈するかで、社会の矛盾やタブーに気がついてしまいます。さまざまな意図しない解釈でも可能になるような作品なのかもしれません。
会田誠「大山椒魚、2003」
参加している31人のアーティストの個性はかなり強いですが、それを束ねている三潴という人物もなかなかおもしろい人のようです。さまざまメディアを巧みに操りながら、したたかに想いを発信していくさまは、アーティストの個性以上に魅力があります。トップギャラリーであるミズマには、今後ますますの注目をしていきたいと思います。
※日本橋高島屋8階ホール(2011年 6月1日~ 2011年6月20日)
精神世界への導き ~ 五百羅漢 増上寺秘蔵の仏画 幕末の絵師 狩野一信 ― 2011年06月18日 18時55分41秒
羅漢(阿羅漢)は、仏教において学道を完成して、これ以上に学ぶ要がない聖人のことを言います。そして、中国や日本では、仏法を護持することを誓った16人の弟子を十六羅漢、仏典編集に集まった500人の弟子を五百羅漢として尊敬しているのです。
幕末に生きた狩野一信(1816-1863)は、湧き出す好奇心と新しい絵画表現を取り入れることで五百羅漢図を描きました。しかし、五百羅漢が繰り広げる壮絶な世界観に飲み込まれ、精神的に追い込まれることですべてを完成することは出来ませんでした。
展覧会は、東北震災の影響を受けて会期が延期となりましたが、一信の100幅を公開したいと思う関係者の努力もあり、無事に開催することが出来たようです。戦争による東京空爆にも奇跡的に逃れることが出た五百羅漢図の全公開は、ある意味奇跡なのかもしれません。
2幅がペアになり1つの場面を構成しています。左右に配置されることになるのですが、これが作品に空間を与えることになり、より迫力のある見方によっては3D的な効果を作っています。21幅からはじまる六道シリーズは、ダンテの神曲と同じように精神世界への導きを具現化しています。
狩野一信「五百羅漢図(第21幅(右)、22幅(左) 六道 地獄、1853-1863」
鮮やかな色彩は、蝋燭など弱い光の中でもはっきりと浮かび上がることを計算していると思われます。また、作品の中には海外(ヨーロッパ)から伝わった陰影法を使ったものなどもあり、五百羅漢図は新たな試みを行うフィールドであったようです。
狩野一信は、五百羅漢図の作成途中で力尽きてしまいますが、本当はこの先の作品のことを考えていたのかもしれません。新しい時代の幕開けを予感して、その扉を少しだけ開いたのかもしれません。
※江戸東京博物館(2011年4月29日~2011年7月3日)
幕末に生きた狩野一信(1816-1863)は、湧き出す好奇心と新しい絵画表現を取り入れることで五百羅漢図を描きました。しかし、五百羅漢が繰り広げる壮絶な世界観に飲み込まれ、精神的に追い込まれることですべてを完成することは出来ませんでした。
展覧会は、東北震災の影響を受けて会期が延期となりましたが、一信の100幅を公開したいと思う関係者の努力もあり、無事に開催することが出来たようです。戦争による東京空爆にも奇跡的に逃れることが出た五百羅漢図の全公開は、ある意味奇跡なのかもしれません。
2幅がペアになり1つの場面を構成しています。左右に配置されることになるのですが、これが作品に空間を与えることになり、より迫力のある見方によっては3D的な効果を作っています。21幅からはじまる六道シリーズは、ダンテの神曲と同じように精神世界への導きを具現化しています。
狩野一信「五百羅漢図(第21幅(右)、22幅(左) 六道 地獄、1853-1863」
鮮やかな色彩は、蝋燭など弱い光の中でもはっきりと浮かび上がることを計算していると思われます。また、作品の中には海外(ヨーロッパ)から伝わった陰影法を使ったものなどもあり、五百羅漢図は新たな試みを行うフィールドであったようです。
狩野一信は、五百羅漢図の作成途中で力尽きてしまいますが、本当はこの先の作品のことを考えていたのかもしれません。新しい時代の幕開けを予感して、その扉を少しだけ開いたのかもしれません。
※江戸東京博物館(2011年4月29日~2011年7月3日)
影響 ~ 東日本大震災チャリティー 損保ジャパンコレクション展 ― 2011年06月29日 22時15分09秒
3.11の東日本大震災から3ヶ月が過ぎようとしています。その影響はまだまだ展覧会にも響いています。本来、損保ジャパンの企画では、セガンティーニ展が開かれるはずでしたが残念ながら延期になってしまいました。そこで、所蔵品による企画展をすることになったようです。
損保ジャパンの所蔵品は、新旧取り混ぜいろいろあるようで、日本の近代作家の作品、美術館の名前にもなっている東郷青児(1897-1978)の作品とコレクション、メセナ活動で発掘した作家の作品と常設の洋画の作品を用いて企画展を急遽立ち上げました。
集められた作品は、企業のコレクションらしくあまり大きくない作品ですが、どこに飾っても活きる良いものです。東郷青児の作品は常設でも展示されていますが、素画などもあわせて見ることが出来るのは嬉しいことです。また彼のコレクションから当時の画壇のつながりも想像できておもしろいです。
毎年、年度末に選抜奨励展として新人の作品を展示していますが、過去の大賞受賞者の作品もまとめて見るとなかなか良いものです。過去に事件があったなとか…いろいろ思い出すこともあって楽しめます。そして、最後はゴッホ、ゴーギャン、セザンヌとなるのですが、いつもある壁を取り払っていたため、明るい光の下で見ることが出来たのが新鮮でした。
※損保ジャパン東郷青児美術館(2011年6月4日~2011年7月3日)
損保ジャパンの所蔵品は、新旧取り混ぜいろいろあるようで、日本の近代作家の作品、美術館の名前にもなっている東郷青児(1897-1978)の作品とコレクション、メセナ活動で発掘した作家の作品と常設の洋画の作品を用いて企画展を急遽立ち上げました。
集められた作品は、企業のコレクションらしくあまり大きくない作品ですが、どこに飾っても活きる良いものです。東郷青児の作品は常設でも展示されていますが、素画などもあわせて見ることが出来るのは嬉しいことです。また彼のコレクションから当時の画壇のつながりも想像できておもしろいです。
毎年、年度末に選抜奨励展として新人の作品を展示していますが、過去の大賞受賞者の作品もまとめて見るとなかなか良いものです。過去に事件があったなとか…いろいろ思い出すこともあって楽しめます。そして、最後はゴッホ、ゴーギャン、セザンヌとなるのですが、いつもある壁を取り払っていたため、明るい光の下で見ることが出来たのが新鮮でした。
※損保ジャパン東郷青児美術館(2011年6月4日~2011年7月3日)