Asagi's Art News





瞬間と未来の化石 ~ HASHI(橋本奉臣)展2006年10月19日 00時43分40秒

ありふれたこと、どこでも起こっていることですが、見ることは出来ません。水に落ちる石の軌跡、壊れるグラスと飛び散る破片、宙を舞う液体の表情・・どれも一瞬のできごとです。写真家の橋本奉臣は、「一瞬の永遠」と呼んでいます。

HASHI

このような一瞬を捕らえるには、高速撮影の出来るカメラが必要になります。高速撮影と言うと、あさぎは、科学の実験を思い出します。しかし、今日の写真は科学ではありません。

アートなのですから撮影前には、大なり小なりイメージや計算があると思うのですが、見ることのない世界に対しては、いったいどうするのでしょうか? 液体の動きなど予測不可能な感じがするのですが、彼の作品はいとも簡単に、そうなることを予想していたように美しく撮影しています。きっと、それが彼のすごいところなのでしょう。

見たことのない世界は、多くの好奇心をかりたててくれます。その演出のひとつだと思うのですが、作品がかなり大きいのです。新聞紙2枚分ぐらいの大きさは、写真の展覧会ではなかなか無いように思います。ほんの一瞬の迫力がせまってくる感じです。

このような感じが前半の展示なのですが、後半の展示は一転してモノトーンで普通の大きさの作品に変わります。「未来の原風景」というシリーズで、少しノスタルジックな風景が撮影されています。写真の処理方法にも工夫があって、まるで化石のようにも見えます。

音が消えてしまったような、とても静かな世界です。未来を意識していることは、人類が滅びてしまった後の世界をイメージしているのでしょう。そう考えると少しさみしい感じもします。確かにいまの世界にも、終りは来るのですが・・。

※東京都写真美術館