Asagi's Art News





門外不出 ~ レオナルド・ダ・ヴィンチ 天才の実像2007年03月28日 23時47分58秒

新聞や雑誌では、33年前に『モナリザ』がやってきた時と同様の盛り上がりを、期待しているようです。受け入れ側の国立博物館も、『受胎告知』をその時と同じ展示室に展示するほどの意気込みです。

公式サイトにある当時の映像を見ると、とても鑑賞のレベルに達していない状況なので、どうなることかと心配して会場に向かいました。とにかく、ダ・ヴィンチの油彩画の本物に会えるという思いが、ワクワク感をあおります。

開催後初の週末でしたから行列覚悟でトイレもすませ、準備万端で国立博物館ゲートに到着しました。しかし、何かが変です。いつもの展覧会と変わらない光景、告知の看板には『ダ・ヴィンチ』の文字が大きくあります。

レオナルド・ダ・ヴィンチ

よくよく周りを見渡すと、待ち時間0分を告げるボートを持つ係員がひとりいます。それで、すんなりゲートを通過、正面の本館に向かいました。お天気は、午後から雨になるかもという予報でしたが、目の前にいる人の姿は、まばらです。

空いているということは、ゆっくり鑑賞できることを意味しますが、門外不出の傑作の展覧会のばず・・・とにかく中に入って見ることにしました。ラッキーなのか、期待が大き過ぎたのか複雑な心境です。

特別展示室の前には、空港などで見かける金属探知機のゲートが設置され、手荷物検査が行われています。この警備のしかたを見てようやく『受胎告知』を見に来たという気分が戻ってきました。鞄の中身を見せるのは嫌なので、ロッカーに荷物を置き探知機をくぐりました。

隣の人が探知機に引っかかっていて、ハンディタイプの探知機でさらに調べられていました。それに、ひと部屋に1枚の絵があるだけなのですが、音声ガイドしっかり用意されています。しっかり商売をしています。

曲がりくねった通路を行くと、次第に『受胎告知』が見えてきました。何処となく大きな教会を思わせるような感じです。3列になって見るように係員が指示しています。空いているとは言え、さすが最前列のかぶりつきの列は行列になっています。しかし、その他は列とはいないくらい人込みです。

近くから見てみたい気持ちもありましたが、今回はダ・ヴィンチの色を見ることにポイント絞っていたので、場所は特に気にしませんでした。係員は、無常に歩いて見るように指示をしています。しかし、その絵の前をただで通り過ぎることはできません。

あたりの様子をうかがうと、そろそろ動く3列とは別にあまり動かない4列目を発見しました。『受胎告知』からは2m近く離れていますが、全体を見渡すにはとても良いところです。少しでも長く見ていたいので・・しっかりと4列目にエントリーしました。

この4列目も残念なことに右斜め方向は、やはり人気があり入り込めません。しかたなく逆の左斜めから鑑賞をすることにしました。たぶん、この4列目は、係員の場内誘導が慣れてきて、もっと人が押し寄せてくればやがてなくなることでしょう。

さて、憧れの『受胎告知』ですが、全体から伝わってくる感じは、シュルレアリズムのような異次元を感じさせるようにも思いました。もちろん、そのオーラは、シュルレアリスムとはまったく違うものです。古い絵の持つ独特の重く吸い込まれような雰囲気が漂っています。

受胎告知
レオナルド・ダ・ヴィンチ「受胎告知、1472」

細かくは判りませんが、研究者が指摘するほどの不自然さは、感じられません。むしろ遠近法の正確さから人物、背景が、ここに存在しなければならいとうような絶対感を与えます。そして、左側からの鑑賞ですが、やはりマリアの存在感は、圧倒的です。

赤と青の衣装の配置と微妙なコントラストは、とても美しいと思います。明るいマリアに対してやや暗い位置にいるガブリエルの衣装の赤がとても力強く感じます。大地の緑と補色なって浮いて際立つはずですが、重厚感がありマリアに敬意をあらわしています。

背景の山河は、薄い青を帯びてあやしく漂う感じです。ガブリエルの羽は、いままで見てきたものとはだいぶ異なりリアルです。それに比べて木々の姿は独特の形状をしています。500年も前の作品にもかかわらず、保存状態は最高であり発色も美しい。出会えてよかった・・至福のひと時が過ぎて行きます。

※レオナルド・ダ・ヴィンチ 天才の実像