Asagi's Art News





”愛”を描く ~ ペルジーノ展2007年06月04日 00時37分18秒

時間がゆっくりと流れていくようです。この時期だけ新宿が古いイタリアの街になるようにも思えます。ペルジーノのことは、良く知りませんがラファエルの先生である聞いたので期待をしつつ見に行って来ました。

ペルジーノ展

展覧会は、いつもよりも余裕をもって展示がされているように思えました。祭壇画であることからサイズも大きくなるからでしょう。また、本来薄暗い教会に飾られるためか、しっかりした照明の元ではかなりはっきりとした色彩なのが印象的です。

ポスターにもなっていた『聖母子と二天使、鞭打ち苦行者信心会の会員たち』などは、鮮烈な赤、青、緑が印象的で、やはりラファエロが憧れた美があるように美しい顔立ちの聖母がそこにいます。

しかし、おもしろいことにペルジーノの作品は、晩年に近づくほどにその鮮やかさは消えていきます。理由は良く判りませんが、時代が変わり求めることも変化していくの自然なのでしょうか。

カトリックでは、やはり聖母子が好まれるようですが、彼の描くイエスもすてきでした。目を閉じ両手を広げてたたずむイエス、背景はありませんが暗く微妙なグラデーションのような感じが雰囲気を作っています。

石棺の上のキリスト
ペルジーノ(ピエトロ・ヴァンヌッチ)「石棺の上のキリスト、1495」

すべてを受け入れ”許す”という教えを説いているようです。キリストの復活というテーマなのでいばらの冠をかぶり、右脇に槍を受けた傷跡と両手のひらに釘を打つけられた傷跡があります。

そもそも、キリスト教は偶像崇拝を禁じていますが、手をあわせてしまいそうなありがたい感じがしてきます。きっと昔の人もそう感じたかもしれないと思うと、ペルジーノの卓越した技術と感性には驚きます。

ある意味”愛”を描くことへの挑戦であるのかもしれません。教会の集まる人たちすべてが、経済力と教養を持っていたわけではありません。貧しい人や教育を受けられない人に、絵が”愛”を語りかけるのかもしれません。

※損保ジャパン東郷青児美術館