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マハ ~ プラド美術館所蔵 ゴヤ 光と影2011年12月15日 23時38分58秒

宮廷画家ゴヤとて映画が作られルほどの人物であるフランシスコ・デ・ゴヤ(1746-1828)。その代表作である『着衣のマハ』の来日は、何と40年ぶりとのことです。長い月日が経っていますが、スペインの秘宝が何度も東洋の島国にやって来ることは、本当にすごいことだと思います。

ゴヤ

絵の力によってすべてを手に入れた男がゴヤです。しかし、また失いものもたくさんあったようです。40才で国王カルロス3世によって宮廷画家の地位を手にいれるものの、病により聴覚を失うことなります。

ゴヤを擁護して最大のパトロンであり、マハのモデルとしても噂にあがるアルバ公夫人マリア・デル・ピラール・カィエターナ(1762-1802)は、権力闘争の渦に巻き込まれ謎の死を迎えてしまいます。そして、ナポレオン率いるフランス軍のスペインへ侵攻と、時代は彼を妬むかのように容赦がないのです。

しかし、『着衣のマハ』が描かれた時期は、ゴヤにとっては我が世の春となり、愛に満ちた傑作を残していくのです。『着衣のマハ』には、もうひとつヌードバージョンである『裸のマハ』がありますが、どちらが官能的であるかとの問いに多くの人は、『着衣のマハ』を選ぶと言います。

ゴヤ
フランシスコ・デ・ゴヤ「着衣のマハ、1800」

その謎は、彼女の前に行けばすぐに判ることでした。彼女のいる部屋に入った瞬間、視線に気付きます。そう、彼女の視線は常に見るものに向けられているのです。こちらから目をそらしても無駄です。彼女の視線は、そこにいる限り逃れることが出来ないのです。

もちろん、彼女の前にいるのは自分だけではありません。しかし、誰もが彼女の視線から逃れることが出来ないのです。だから、誰もがすぐに彼女の魅力の虜になってしまうのだと思います。だから、ゴヤはすべての愛と情熱を『着衣のマハ』に注ぎ込んだように思うのです。

手に入れられるものはすべて手に入れたつもりでも、本当にほしいものが手に入っていないことに気付くのです。そして、欲すれば欲するほど、それを手に入れることが難しいことに気付いたのかもしれません。、『着衣のマハ』は、その願いの象徴なのだと思います。ゴヤの願い…生きているうちもう一度会ってみたいと思います。

※国立西洋美術館(2011年12月2日~2011年12月11日)

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