Asagi's Art News





彼の愛 ~ ピカソとモディリアーニの時代2006年09月15日 22時14分17秒

哀愁が漂いだす季節に彼の作品は、輝きはじめるのだと思います。彼とは、もちろんモディーことアメデオ・モディリアーニです。アルコールとドラッグに溺れた彼ですが、ジャンヌへの愛は迷いがありません。

平日の渋谷は、人通りは多いですが思ったよりも平静を保っているようです。いつもの美術館でいつもよりたくさんの彼の作品に出会うことは、とても嬉しいことです。心なしか街を歩くカップルたちが、素敵に見える気分です。

はじめに挨拶をしてくれるのは、ピカソとブラックですが、今日は長話はしません。ゆっくりとそれでも足早に彼の作品に近付きます。今回の展示では、彼の作品だけをひとつの小部屋にしてありました。これもたいへん嬉しいことです。中央に椅子がおいてある気配りも素敵です。

まず、はじめに目に入るのは、その奥に置かれた無防備で官能的な「肌着を持って座る裸婦」というヌードの作品です。絵を描くときに生じる画家とモデルの微妙な関係が伝わります。しかし、彼の描く女性は、どれもジャンヌに良く似ていて別の女性であるにもかかわらず、彼女への愛を感じてしまいます。

そして、体を右側に振り向けるとジャンヌと愛娘を思わせる「母と子」がすぐそこにありました。画家の想ういつくしみの瞳が、そこにあります。すべてが愛のために描かれている、そう感じずにはいられません。

もちろん、ジャンヌもまた彼を愛しその意思をつらぬきます。彼らに起こった辛い結末は現実ですが、愛し合う喜びも感じていたことでしょう。温かな愛を感じて・・。

母と子
アメデオ・モディリアーニ「母と子、1919」

※Bunkamura