Asagi's Art News





赤と緑 ~ キスリング展2007年08月13日 23時39分12秒

ようやくキスリング展が、横浜に巡回してきました。キスリング展としては15年ぶりだそうです。いつもモンパルナスの画家のひとりとして1・2点の作品にしか出会うことができませんでした。今回、ようやくまとまって彼の作品に会うことができてとても嬉しいです。

キスリング

展覧会は、初期の作品から晩年に至るまでの約60点の展示です。デパートなので美術館といってもかなり苦しい感じなのですが、それでも良いという感じです。

まず疑問だったのが、いつ頃からあの激しい赤と緑を使いはじめたのかでした。しかし、答えはすぐにありました・・・ほぼ最初からです。初期の作品は、たしかに他の画家の影響を受けていて、これはセザンヌ、これはピカソなどと、とてもわかりやすいのですが、赤と緑だけは最初からあります。

もうひとつ疑問があって、いつ頃から肖像画の目が大きくなったのかでした。これは、少し判りづらかったのですが、たぶん絵が売れはじめてきた頃なのかなと思いました。この点については、もう少し調べる必要がありそうです。

それから、キスリングは、判りやすい人のようで、売れない頃のモデルは近親者が多いのですが、売れてくると富豪や女優にモデルが変化して行きます。ただ、おもしろいのは、どのモデルも身だしなみがキッチリとしているところです。

赤い長椅子の裸婦
モイーズ・キスリング「赤い長椅子の裸婦、1937」

ヌードにしてもそれは変わりません。髪を整えて視線をこちらに向ける、ポーズも大胆というよりは美しさを優先しているようです。『赤い長椅子の裸婦』には、赤に対じする緑がはっきりとはありませんが、作品に対する考え方が一貫していることが判ります。

彼の作品は、妖しいまなざしが魅力的です。絵画は何も語りませんが、その瞳は何かを問いかけます。眼は口ほどにものを言う・・・彼の作品にぴったりな言葉かもしれません。

※そごう美術館

コメント

_ 一村雨 ― 2007年08月19日 08時43分05秒

キスリングとモディリアーニは親友同士で、
お互い特徴のある目を描くなぁとずっと思っていました。
ひょっとしたら、目の描き方も影響しあっていたのかなぁと
思いました。

_ あさぎ ― 2007年08月21日 00時03分09秒

>一村雨さん

キスリングとモディリアーニは仲間として影響しあっていたと私も思います。肖像画の中でも人物の目は大切です。描かれる人物の心を写し出すことも可能ですね。彼らの展覧会が同じ時期に開かれ見に行けることはとても嬉しいことです。

_ Tak ― 2007年08月27日 21時19分58秒

こんばんは。

好きな作家さんの記事を書く時は緊張します。
若冲やフェルメールならすらすら書けるのですが…

キスリング展最高でした。
また東京へ巡回してきたら必ずや。

_ あさぎ ― 2007年08月29日 00時36分34秒

>Takさん

こんばんは、いつもありがとうございます。

好きだと緊張しますね・・・お気持ち判ります。私も同じ気持ちになります。
まだまだ、知らないキスリングがたくさんあるようなので、この次も楽しみです。

_ とら ― 2007年08月29日 20時12分12秒

15年ぶりでキスリング展を観ましたが、とても良かったです。
とくに、友人に対する優しい気持ちが表れている画に惹かれました。
画には人格が現れてくるのかもしれませんね。

_ あさぎ ― 2007年08月31日 01時07分45秒

>とらさん

またまた、こんばんは、

彼の作品は、色鮮やかですが丁寧に描き込んでありますね。確かに優しい気持ちが作品から伝わってきましたね。もっとたくさん彼の作品を見てみたい、そんな気持ちでいます。

トラックバック

_ つまずく石も縁の端くれ - 2007年08月19日 08時40分28秒

シャガール、ユトリロ、ローランサン、フジタなどエコール・ド・パリの画家の展覧会は、見ているのだが、そういえば、キスリング展は見たことがなかった。聞けば15年ぶりの回顧展ということで、前回の展覧会の記憶がない私には、はじめてまとまったキスリングの作品を見る...

_ 弐代目・青い日記帳  - 2007年08月27日 21時18分53秒

そごう横浜美術館で26日まで開催されていた
「キスリング展 モンパルナス−その青春と哀愁」に行って来ました。



所謂「エコール・ド・パリ」に属する画家さんの中では個人的に最も好きな作家のひとりがモイズ・キスリング(1891年-1953年)です。キスリングの作品が展覧会に一枚あるだけでポイント上がってしまう、それくらい好きな画家さんです。

今回のチラシに使われている「赤いセーターと青いスカーフをまとったモンパルナスのキキ」たまらない一枚です。このどこを見ているか分らないぼってりとした目。いいな〜。(最近の中島美嘉に似ていたりも)でもキスリングから感じ取る良さって中々理解してもらえません。かみさんにも「どこがいいの?」と一蹴。
1925年

具体的にどこが好きかと言われても答えに窮してしまうのですが、敢えてキスリングが描く人物像に限って言うなら「平面性」。非立体的な薄っぺらな感じが好きです。常々思っていることですが誤解を承知で「キスリングって日本画っぽい」のかと。

ただし全てが全て平べったいわけではなく、こんな作品も。

「オランダ娘」1922年

オランダ娘がどうしてコサックダンスを…と最初見間違えました。
ちゃんと椅子に手をかけている姿なのですね。失礼。


同じタイトルの作品もう一枚ありました。

「オランダ娘」1928年

キスリングはエコール・ド・パリの画家の中では人生円満に過ごした作家さんです。長生きしました。他の画家や当時の流行も積極的に取り入れ画風も変化していきました。中でもオランダ絵画に学んだ時期があり、それでこうした作品を残しているのだとか。だからお花の絵も多く描いているのですね。


「花束」1931年
ブリューゲルへのオマージュ的な意味もあったのかもしれません。
因みにキスリングが描く花の絵も好きです。色鮮やかでとても印象的です。

昨年ホテルオークラで開催された第12回2006年「秘蔵の名品アートコレクション展」〔花鳥風月〜日本とヨーロッパ〕にて実施された“あなたが選ぶ花鳥風月コンテスト”で堂々の6位入賞を果たしたのがこの作品でした。
覚えていらっしゃる方も多いのでは。

「花」モイーズ・キスリング

また「キスリング」「花」と来れば頭に浮かんでくるのが「ミモザ」
「パリを愛した画家たち展」でも見事で鮮やかなミモザの絵を眼にすることできましたが、再びそごう美術館でもパリ市美術館所蔵の「ミモザの花束」1946年を観ることが出来ました。何度観ても感動の薄れない作品です。(横から観るとミモザの花ひとつひとつがかなり厚塗りされていて、お釈迦様の螺髪(らはつ)のようでした)

キスリングが好きな理由、今もうひとつ思いつきました。
「オランダ絵画的」だから。

そうそう、書くの忘れましたが今回のキスリング展、日本では実に15年ぶりの回顧展だそうです。同じエコール・ド・パリ時代のモディリアーニやユトリロなどがしょっちゅう頻繁に展覧会開催されているのと比較するとこの15年は大きい。三倍否五倍位の頻度かと。そう考えると画家って幸せな人生を全うするのも良し悪しかと。破滅的な人生送り「物語性」に富んでいることも後世の評価に繋がるのでしょうか。

何だか複雑です。

因みにモディリアーニが描いたキスリングの肖像画。


何だか複雑です。

キスリングってだからもっともっと評価されても、見直されてもいいのではと。
今回63点の作品が展示されていましたが1911年に描いた初期の作品から1953年の亡くなる年の作品まであり見応え充分ありました。当然「キスリング的」な作品ばかりではなく、えっ?これもキスリングと思わせる作品も数多。

キュビズムの影響をもろ受けている若い時の一枚。

「プロヴァンス風景」1913年

セザンヌ風の作品「青い花瓶のある静物」1913年で得た技法にオランダ絵画のエッセンスを加え、キスリング独自の色彩でまとめた作品。

「果物のある静物」1932年

観光地のポストカードのような一枚。これなんか作品だけ見せられても絶対キスリングだって分りませんよね。こういう緻密な作品も晩年には描いていたようです。

「マルセイユ」1940年

そろそろ終りに。でもその前にひとつだけ。
今回多くの肖像画を観ることができ気が付いたことあります。
キスリングの描く人物像はその無表情さや視点の定まらない目つき、または平べったい感じなど観て取ることできます。それに豊かな色彩も。

それらがあまりにも印象強く、個性的なため好き嫌いもはっきりするのでしょう。特に嫌いや苦手な方、どうぞ今度キスリングの人物画ご覧になるときは、その背景に注目してみて下さい。

一見何も描かれていないそれこそ平面のように見えますが、実は大変立体的な空間構成を成していることに気が付きます。このブログでご紹介した↑の三枚の人物画の背景スクロールして今一度よーくご覧になって観て下さい。「縦の線」がはっきりと描かれているのが分ります。特にチラシに使われている「赤いセーターと青いスカーフをまとったモンパルナスのキキ」の画面左下など一目瞭然。

セザンヌやキュビズムの影響を受けた痕跡が人物画の背景に見て取ることできます。もしかしてキスリングは人物よりもどちらかと言うと背景の空間構成を楽しんでいたのかもしれません。背景は様々。人物は皆ボーとしているのもその所為かな。

何て素人の戯言はこれくらいにしてそれでは「今日の一枚」


「スウェーデンの少女、イングリットの肖像」1932年

美しい作品です。人物像はとても綺麗に花まできっちり描かれています。でも失敗作だったようでキスリングはこれをひき取りもう一枚描いて依頼主に渡したそうです。どこが失敗作なのか…もしかして「背景」?!

この展覧会以下を巡回するそうです。東京にも来ますね!また観に行かなくちゃ。
北九州市立美術館 9月1日〜10月8日
府中市美術館 10月13日〜11月18日
松坂屋美術館 11月23日〜12月24日

質問:
「褐色の髪の少女の頭部、木の葉の背景」1932年という、一風変った魅力的な人物像がありました。画像を探したのですがこれでいいのかどうかあやふやです。「キスリング展」行かれた方これでしたよね?


この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=1119

_ とんとん・にっき - 2007年08月28日 10時06分29秒

茨城県立近代美術館



水戸市にある千波湖は、湖の周囲が約3.1km、水戸市民の憩いの場です。湖上でボートを楽しむ人や、ジョギングやウォーキングを楽しむ人を多く見かけます。ここ数年、周辺の整備が進み、偕楽園から橋でつながり観梅シーズンには観光客で賑わいます。江

_ Art & Bell by Tora - 2007年08月29日 20時08分10秒

 「モンパルナス‐その青春と哀愁」という副題である。ポスターの「モンパルナスの女王」↑、キキの赤いセーターと青いスカーフの鮮やかさがこの展覧会を象徴している。

 1991年に新宿にできた三越美術館の第1回展として開催された「生誕100年記念キスリング展」以来16年ぶりではあるが、その時と同じくジュネーブのプチ・バレ美術館からの作品が中心である。

 ということであまり期待しないで行ったのだが、予想をはるかに上まわる良い展覧会だった。その理由は、第一に、前回との重複が24点と意外とすくなかった。第二に、説明がとても親切で分かりやすかったからである。

 詳細はホームページに書...