Asagi's Art News





共に語り合う ~ 高橋真琴の夢とロマン展2010年06月30日 00時00分04秒

「少女画」とはあまり聞き慣れないのですが、高橋真琴の作品をそのように言うようです。高度成長期の日本において、絶大な人気を得た彼の描く少女は、当時の少女たちの傍にいつもいて共に成長してきました。

高橋真琴

高橋真琴を「彼」と言いましたが、実は男性であるとはあまり知られていなかったようです。初期の少女漫画は、手塚治虫、赤塚不二夫、ちばてつやなど多くの男性漫画家が描いていることから不思議なことではありません。

しかし、高橋真琴という名前の中性的なイメージと憧れの少女像に、作者が女性であると思っていた人も多いとのことです。もちろん、メディアへの露出もなく商業的な戦略もあったと思いますが、大人になってから高橋真琴が男性であること知った時には、それなりにショックがあったと思います…

今回の展覧会ですが、高橋真琴の初期の作品から最新作まで200点以上という大規模なものです。漫画の原稿であるため、サイズは小さいものが多いですが、色彩鮮やかな水彩の原画や製品化された文具などの展示もあり、彼の仕事の幅広さを感じることができます。

高橋真琴
高橋真琴「パリジェンヌ (B4スケッチブック 文具用イラスト:ショウワノート)、1975」

彼の作品に登場する少女は、常に正面を向きこちらを見つめています。これは、作品と共にいる少女たちと共に語り合うことを意識して、感情さえも伝えられるようにしているからだと考えられます。

例えば、展覧会のポスターにもなっている文具用イラストの『パリジェンヌ』もそうですが、特徴のある大きな瞳がこちらを見つめいます。楽しいときには喜びを分かち合い、さみしいときには優しく慰めてくる。眼ぢからとでも言うのでしょうか…現実の友人以上に近い存在となっていきます。

作風は変わることなく仏を掘り続ける仏師のように、いまも作成されています。時代が変わっても、その時代の少女たちの傍にいる。それが、彼の目指すところであり、けしてぶれることはないと思われます。

※八王子市夢美術館(2010年6月4~2010年7月4日)
※真琴るーむ