Asagi's Art News





策略 ~ 没後25年 有元利夫展天空の音楽2010年08月26日 22時09分49秒

若くして命が尽きてしまう画家は、けして少なくないと思います。あまり良い言い方ではありませんが、絵に命を吸い取られてしまうのかもしれません。避けることはできまでせんが、もっと彼らの作品を見たいと思うのはごく自然なことです。

有元利夫

有元利夫(1946-1985)、彼もそのひとりです。大きな賞を受賞することも、独自の新しい世界を創造することもできました。しかし、運命とは皮肉なものです。これからという時に彼は逝ってまったのです。残された作品には、短い人生の過去と未来、そして、ある試みが刻み付けられています。

彼の作品は、ルネッサンス期の古典絵画を作品に取り入れていて、ある種の宗教画のような遠近法のないものに仕上げています。いかにも古い絵であるかのように、画面をこすり傷を付けて年月を刻み込む工夫も見ることができます。女性の肖像画には表情はなく、足下は衣服で隠くして、その仕草さえ判りません。

これは、見る人に対して固定観念を持たせないことが目的であるとのことでした。存在するが、何故そこに彼女がいるのか? 容易には理解することは出来ないような気がします。モヤモヤとした感じが漂う不思議な作品です。彼の造る世界の印象は残るのですが、さっき見た作品はどんな作品だったのか…そんなことが思い出せないのです。

だから、今回の展覧会では、彼のこの一枚という作品が思い浮かばないのです。回顧展でこんな感じがしたのは、はじめてかもしれません。浮遊感に近い印象と淡いかすれた色彩のようなものが残っているのですが…。もしかすると、これが彼の狙いであり、まんまと策略にはまってしまったのかもしれません。

※東京都庭園美術館(2010年7月3日~2010年9月5日)