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別れ ~ 奈良美智 君や 僕に ちょっと似ている2012年07月28日 00時12分11秒

奈良美智さん(1959-)の作品にはじめて出会ったのは、2005年の横浜トリエンナーレでした。夜からはとても冷えて、すてきな作品ではあったものの寒さで印象が薄かった思い出があります。良く行く原美術館には、彼の隠し部屋があって、企画展の合間におもしろいアクセントを与えています。

奈良美智

個展としては久しぶりとのことですが、最近、人気若手アーティストの企画展を連発している横浜美術館は、とても気合いを入れている様子でした。初日だったからかもしれませんが、いつもの正面入り口には、告知の垂れ幕はありませんでした。

しかし、エントランスに入ると白い巨大な作品が待ち構えています。これには、ちょっとビックリです。まだ、行ったことはないのですが、青森県立美術館の『あおもり犬』と同じ手法で造られた作品のように思います。

展覧会は、人と同じサイズの彫刻、彼の作品のある部屋、さまざまな素材に描かれた絵画にわけることができます。立体的な奈良ワールドを体感できる彫刻作品には、作成過程で使用したドローイングや石膏などもあり、出来上がるまでの様子を想像しながら鑑賞することができます。

奈良美智

彼の作品のある部屋では、彼のファンであれば揃えてみたい小物などがあり、多くの人たちも羨ましげに触れ合っているようでした。そして、後半の絵画は、人気のキャラクターたちが、これでもかと言う勢いで描かれています。これには、自然に笑顔がこぼれてしまいます。

彼の出身は青森ですが、愛知県立芸術大学で櫃田伸也(ひつだのぶや)(1941-)と出会うことで、自身のスタイルを成熟させていったようです。村上隆(1962-)などともに日本の現代美術の第二世代とも呼ばれていますが、何とも言えない癒やしの空間を与えくれます。

展覧会のタイトルにある「君や 僕に ちょっと似ている」は、自身の作品が自分のものでなくなってしまったこと意識しているが、それでも自分の分身であるとの心の葛藤であるように語っています。そして、作品たちも個々の自我を持っていると続けています。

自身の作品を世の中に送り出したとき、きっと誰しもが思うことなのかもしれません。アマチュアとは違いプロフェッショナルであることが、よりそのことを強く感じているのだと思います。画家にとって作品の完成が、その作品との別れになるのですから…

※横浜美術館(2012年7月14日~2012年9月23日)

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