Asagi's Art News





母に捧げる花束 ~ ギュスターヴ・モロー展2005年10月06日 00時20分29秒

ギュスターヴ・モロー展

象徴派の巨匠ギュスターヴ・モローと言われ、その作品はカラフルで神秘的な世界が展開すると聞き、渋谷の雑踏の中を潜り抜けBunkamuraまでやって来ました。この日、あさぎは少し体調が悪かったのですが、絵に会えば何とかなるだろうと思っていたのですが、後でひどい目にあうことになります。

午後7時を回った美術館の中は、いつもよりも人が少なく静寂が漂います。本展覧会では、モローの初期の作品から神話を題材にした作品、珍獣ユニコーンを描いた作品、そして代表作のサロメと続き、晩年作品までを網羅します。あさぎの疲れた体の中に彼の人生の調べが流れ込んで来るのを感じました。サロメの中でも「出現」は、特にすばらしく、製作が未完であったものを晩年に加筆して完成させるのですが、加筆された白のエッジがオリエンタル的な演出をして、物語に大きな膨らみを与えているようです。

出現
ギュスターヴ・モロー「出現」

出現
※「出現」柱の拡大図:後から描き込まれた白いエッジが見える

彼は、下絵のデッサンをしっかり描いて、それを忠実に拡大して作品を製作するようです。緻密なデッサンは、同時代の画家とは異なりアカデミーによる学習から得たものだそうです。財力もあったのでしょう、生き生きとした線は、そのテクニックと相俟って彫刻のように力強く迫力があります。ところが、色彩になると少し別の方向に展開するように思えるのです。

カラフルで幻想的な色彩が、象徴派であると言われればそれまでなのですが、あさぎは、何か別のものを感じがして、しばらく考えていたのですが、彼は、母親をこよなく愛していようで、彼女のための多くの作品を残したいと思ったように感じたのです。すると、作品の色彩の鮮やかさが、花束のように思えきて、そうか、彼は、母に永遠に咲き誇る花々を送りたかったのか、と思ってしまいました。あくまでも、あさぎの勝手な思い込みで、体調は徐々に悪くなって来る中でのことですが。結局、あさぎは、翌日にあえなくダウンとなってしまたので、確信は持てませんが、たしかにそのように感じたと思っています。

※Bunkamura