Asagi's Art News





夢を作ること ~ ディズニー・アート展2006年09月08日 01時01分04秒

ウォルト・ディズニーの作った初期のアニメーションをオールドディズニーと言うそうです。しかし、ディズニーアニメーションは毎年新作が公開され人気があります。彼が作り上げたディズニーワールドを継承しながらも、彼の作った作品とは違った作品が生み出されています。

オールドディズニーは、最新のCGとは違いセルを使って作られています。この展覧会は、以前に日本で開かれたディズニー展で使われた資料が、偶然に見つかったことで実現したそうです。撮影に使用したセルや背景など、なかなか見ることのできない貴重な資料が、見ることができます。

ディズニー・アート展

あくまでもアートということですが、ディズニーのネームバリューは、一般の人を多く巻き込みます。したがって、会場はディズニーファンや子どもの姿で大盛況となります。主催者にとって嬉しい誤算なのか、狙っているのかは判りませんが・・。

作品の多くは意外と小さく、横長の背景画以外は、あまり大きい作品はありません。展示は、初期の作品から順番に紹介されます。ところどころ映像資料もあり、飽きのこない展示になっていました。また、撮影方法や作成過程のわかる解説が随所にあるのは勉強になります。

初期のミッキーマウスの映像などは、モノクロですが楽しくて愉快な作品です。9人の伝説のアニメーターという人たちがいるのですが、それぞれが個性的でその原画は魅力的です。得意分野がそれどれ違いことでオールドディズニーを支えていたことが判ります。

日本のアニメーションもこのオールドディズニーに影響され発展してきています。発想、技術、そして文化である夢を作ることを吸収して、いまの日本のアニメーションがあることに気づく展覧会でした。

※ディズニー・アート展

午後ティーな気分 ~ なつの常設展示2006年09月10日 08時46分51秒

日差しが柔らかくなってきました。午後のひと時、東京の散歩も楽しいものです。三越前から日本橋を渡り、高島屋を抜けてるとブリヂストン美術館があらわれます。最近、このブリヂストン美術館のカフェルームが雑誌に載っているようです。

3時過ぎでちょうどおやつの時間、本当なら絵画を見てからお茶にするのがいいと思います。しかし、今回は先に何かお腹に入れてたいと思い、まずはカフェの椅子に座りました。ここのカフェは、初めてでしたが通りに面したガラス窓から明かりが入りとても明るいカフェです。

キッチンは、飲み物とサンドイッチやデザート程度をを作れるぐらいの小さなスペースしかありません。そして、このカフェの自慢のフレスコ画が壁に3点飾られています。注文は、人気のサンドイッチが売り切れだったので、ハムのホットサンドとオレンジジュースを頼みました。

このとき、フレスコ画を説明する紙をくれるのが、心憎いサービスです。お値段は少々お高いのですが、なかなかおいしいホットサンドを絵を見ながら頂けるのはとても嬉しいことです。お腹も満たされたので、肝心の展覧会場に行くことに・・。

Gogh02.jpg

この夏のブリヂストン美術館は、特別展示ではなく常設展でさりげなく開催しています。もともと、特別展でも展示数は少ない美術館ですから、久しぶりに友人にあうような感覚をいつも感じます。

印象派からはじまりエコール・ド・パリ、シュルレアリズム、抽象主義と古代ギリシャ、エジプトといつもの展示です。何点かはじめて見る作品があったりするのが楽しいです。絵は同じですが、そのときの気分や季節によってもその印象が変わってくるのが不思議です。

例えば、藤田の猫が妙に愛らしく思えたり、ビュッフェの赤と黒が凛々しく見えたり・・。絵画たちは、不変の時を語ります。それゆえ、移りいく自分の心を見つめるいい機会なのでしょう。

※ブリヂストン美術館

彼の愛 ~ ピカソとモディリアーニの時代2006年09月15日 22時14分17秒

哀愁が漂いだす季節に彼の作品は、輝きはじめるのだと思います。彼とは、もちろんモディーことアメデオ・モディリアーニです。アルコールとドラッグに溺れた彼ですが、ジャンヌへの愛は迷いがありません。

平日の渋谷は、人通りは多いですが思ったよりも平静を保っているようです。いつもの美術館でいつもよりたくさんの彼の作品に出会うことは、とても嬉しいことです。心なしか街を歩くカップルたちが、素敵に見える気分です。

はじめに挨拶をしてくれるのは、ピカソとブラックですが、今日は長話はしません。ゆっくりとそれでも足早に彼の作品に近付きます。今回の展示では、彼の作品だけをひとつの小部屋にしてありました。これもたいへん嬉しいことです。中央に椅子がおいてある気配りも素敵です。

まず、はじめに目に入るのは、その奥に置かれた無防備で官能的な「肌着を持って座る裸婦」というヌードの作品です。絵を描くときに生じる画家とモデルの微妙な関係が伝わります。しかし、彼の描く女性は、どれもジャンヌに良く似ていて別の女性であるにもかかわらず、彼女への愛を感じてしまいます。

そして、体を右側に振り向けるとジャンヌと愛娘を思わせる「母と子」がすぐそこにありました。画家の想ういつくしみの瞳が、そこにあります。すべてが愛のために描かれている、そう感じずにはいられません。

もちろん、ジャンヌもまた彼を愛しその意思をつらぬきます。彼らに起こった辛い結末は現実ですが、愛し合う喜びも感じていたことでしょう。温かな愛を感じて・・。

母と子
アメデオ・モディリアーニ「母と子、1919」

※Bunkamura

色が踊る ~ ラウル・ディフィ展2006年09月16日 22時40分13秒

色が踊る・・ラウル・ディフィの作品から受ける印象的です。素早く塗られた水彩絵の具の軌跡は、音楽を奏でているように思えます。異なる音は色を変えハーモニーが描かれていきます。

たくさんの色を使っているのですが、そのバランスに居心地の良さを感じます。前半は、彼の水彩や油彩を展示しますが、後半に近付くとファションデザインなどの商業デザイン先駆けとなったもう一人の彼に出会えます。

大胆な花柄に彼の色彩が溶け込み斬新なアールデコの世界を演出してくれます。音楽は、彼にどんなインスピレーションを与えていたのでしょうか? 美しい調べに軽やかなリズムを彼の作品から感じます。

花の習作
ラウル・ディフィ「花の習作、1928」

彼の人生にとっても音楽は重要な意味を持っていると聞きます。多くの展覧会では、絵画と音楽を同時に楽しむことは出来ないのですが、彼の作品はぜひ音楽と一緒に楽しみたいものです。

※大丸ミュージアム・東京

タイムリープ ~ 時をかける少女2006年09月17日 22時43分26秒

この夏、単館ロードショーで大人気だったので、ぜひ見たいと思いつつも行くことが出来ませんでした。ロングラン上映となったいまもたくさんの人が劇場にやって来るのは、それだけ魅力がある作品なのでしょう。

十数年前に原田知代主演の実写の作品を見ていますが、こんどはアニメーションです。しかも、キャラクターデザインを担当するのがデビューの頃から好きだった貞本義行(あのエバンゲリオンのキャラクターデザイナー)で広告のポスターも良くて公開前に写真に納めていました。

時をかける少女

お話は、主人公の真琴が突然タイムリープ(過去に戻れる能力)できるようになり日常に起こる出来事に便利に使って行きます。仲良し3人組みの千昭と功介に起きる未来を少しだけ変えていく。そして、運命の日が近付いて来る。軽いラブコメのような展開は、懐かしような、変わりない人のいとなみのような感じを受けます。

真琴がタイムリープをするときに幅跳びをするように駆出し飛ぶ時に描かれる青空が印象的です。初夏の香りが心をワクワクさせるようです。それから、物語の鍵をにぎる絵が出て来るのですが、この絵は真琴の伯母である和子が、博物館で修復をしている作者もわからない一枚でした。

穏やかな表情をした女性が描かれ、何もかもが平静に見えるが、その絵が描かれた時は戦乱の時代と語られます。絵には、たしかに時をこえて語りかけるタイムマシンのような力があります。ただ、それを感じることが出来るかは、その人の持っている感性です。人を愛すること、穏やかな日常を願う想いは時をかけるのでしょう。

※時をかける少女