Asagi's Art News





大人の世界 ~ モダン・アート、アメリカン2011年11月03日 23時04分01秒

ヨーロッパに憧れていたアメリカの画家たちが、独自の道を歩むことで開花したモダン・アート。都会的とか、合理的とかの言葉がぴったりとあてはまるクールな作品を多く見ることが出来ます。

今回の展覧会は、アメリカの実力派のコレクターであるダンカン・フィリップス(1886~1966)のコレクションからの選りすぐりを集めたと評判で、また良い作品に会えると大いに期待を持って美術館に向かいました。

モダン・アート

展覧会の構成は、ヨーロッパの影響が残る19世紀後半の作品からはじまり、ジョージア・オキーフ(1887-1986)やエドワード・ホッパー(1882-1967)などのモダニズムへと展開します。そして、最後にジャクソン・ポロック(1912-1956)やマーク・ロスコ(1903-1970)と言った抽象主義につなげる王道の展示となっています。

印象的に華やかな作品はあまりないのですが、じっくり見ることで味のある良い作品がかなりあるように思います。ちょっと失礼な発想かもしれませんが、お酒のたしなみながら静かに鑑賞したい。つまり、大人向けの作品がメインでやって来ているのです。

さすがは、フィリップス・コレクションです。絵画をどうのように楽しむのかも、さりげなく教えてくます。紳士淑女には、教養や知識を得るという勉強も大切ですが、別の意味の大人の世界の探求がもっと大事であると言っているのだと思います。

さて、そんな大人の作品の中のお気に入りの一枚は、ミルトン・エイヴリー(1885-1965)の「書きものををする少女」という作品です。地味な色彩で単純化された人物が印象的でで、どことなくアンリ·マティス(1869-1954)の作品に似ている感じがしました。

モダン・アート
ミルトン・エイヴリー「書きものををする少女、1941」

この作品、展示エリアが抽象主義に近いところあったことから、興味があって少し調べてみました。ミルトン・エイヴリーは、マーク・ロスコなど親交があり、若い頃から互いに影響しあう間柄だったそうです。そして、やはり批評家の間では、マチス的な要素を持つ画家として認知されていました。

具象でありながら、抽象のように精神的な感情や虚無的な印象を持っている不思議な作品です。非現実的な画面構成から、書きものに集中する少女の感情がにじみ出てくるよう感じがします。それは、ミステリーの世界に引き込まれるかのような感覚に近いようにも思います。

※国立新美術館(2011年9月28日~2011年12月12日)

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