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箱根から横浜 ~ ポーラ美術館コレクション展2010年08月04日 22時20分20秒

ポーラ化粧品(ポーラ・オルビスグループ)の鈴木常司(1930~2000)のコレクションを所蔵するポーラ美術館は、静かな箱根の山の中にあります。特に印象派やポスト印象派のコレクションには定評がありますが、どうしても箱根まで訪ねていくとなると、それなりの覚悟が必要になります。

ポーラ美術館

そんなおり、企画展に力を入れている横浜美術館が、箱根から横浜まで、それら作品を連れてきてくれることになりました。しかも、印象派に加えてエコール・ド・パリと、なかなか美味しいところを選りすぐっているます。

約9500点のコレクションの中でもモネ、シスレー、ルノワールなど印象派の作品は、すばらしいものがたくさんあります。また、この春に国立新美術館で行われた「ルノワール展」でも、ポーラ美術館の作品が科学分析の対象となっていて、研究活動にも盛んに取り組んでいるようです。

さて、今回の展示ですが、前半に印象派の作品を展示して、後半にエコール・ド・パリの作品を持ってきています。また、エコール・ド・パリの展示は、作家毎の紹介となっていて、それぞれの作家に想いをはせやすく良い感じに仕上がっています。

想いを入れとなれば、やはりキスリング(1891~1953)になります。そして、注目は赤いドレスの『ファルコネッティ嬢』です。キスリングと言えば、モンパルナスのキキをひとりの女性として愛して、誰も描かなかった清楚なキキの肖像を残しています。

この『ファルコネッティ嬢』の肖像ですが、そのキキを描いた2年後に描かれた作品のようです。モデルは、女優ルイーズ・ルネ・ファルコネッティ。たぶん、「裁かるゝジャンヌ(LA PASSION DE JEANNE D'ARC)」の撮影中に描かれたものではと思われます。

ポーラ美術館
モイズ・キスリング「ファルコネッティ嬢、1927」

この映画を見たことはないのですが、ジャンヌ・ダルクの生涯をドキュメンタリー・タッチで描いた作品と言われています。ジャンヌ役に徹する彼女に対してキスリングは、役とは異なった彼女自身の内面を描いているように思います。

ジャンヌの悲劇的な一生に心を寄せているような表情が美しいです。華やかな映画女優を象徴しての赤のドレスですが、静かな背景の中に清楚感が漂います。目つきも優しく慈悲深い感じのする素敵な作品であり、コレクターの鈴木常司の眼力は確かなものだと思います。

※横浜美術館(2010年7月6日~2010年9月4日)

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