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若い才能 ~ 学生企画による学生作家の展覧会「いない いない GO!」展2010年08月06日 23時27分10秒

あふれでるアイディアは、あらゆる制約を克服して自分自身の表現を実現させるのでしょう。どの作品も勢いがあり、その場にいるだけで元気をもらうことができます。若い才能から放たれるパワーは、なかなか心地の良いものです。

この「いない いない GO!」展は、相模原市のアートプロジェクトだそうで、公募で集まった大学生が自身で企画、制作をして推進されるプロジェクトだそうです。企画は、今年で5年目を迎えしっかりと定着しているようです。

いない いない GO!

テーマがあり、今回は「不確か」なものとしています。例えば、UFOやツチノコのような生物のような、ちょっと怪しい世界を表現するようです。参加メンバーは、近隣の美術系大学生の9名(うち1つはチームで参加)です。造形や絵画、インスタレーションなど表現方法は、それぞれとなっています。

いくつか作品を紹介してみたいと思います。最初は藤桝多玖巳(女子美術大学)の「クマさん」「ウサギさん」です。正面から見ると動物の可愛らしい姿をしていますが、背後に回り込むと中に入っている人がはみ出ている醜い姿をさらしています。正面も背後も現実である。見るものにどちらを見たいのかと語りかけているようにも思います。

いない いない GO!

しかし、見られるものも、どちらを見せたいのかははっきりとしない。ある人には正面だけを、またある人には正面も背後も見てほしい。でも、それを決める基準って何だろう…と考えているようにも終えます。確かに「不確か」な何かがそこにあります。

次は絵画の作品です。青木絵里子(多摩美術大学大学院)は、自身の記憶の対して「不確か」を見つけたようです。スナップ写真のような絵ですが、そこに描かれるべき人の顔がぼやけています。楽しく過ごしてはずの思い出は、本当のことだったのかと問いかけているようです。人の記憶ほど当てにならないものであるのかもしれません。

いない いない GO!

オル太(多摩美術大学)として唯一のチーム参加をしているインスタレーションは、話題の相撲を作品に選んでいます。力士のいない相撲部屋には、何があるのだろうか? 本当に力士は存在するのか? をユーモアいっぱいに表現しているようです。神棚、土俵、番付など、神聖と言われているものは、どうもうさん臭いと皮肉っています。

いない いない GO!

そして、少しやり過ぎと思えるほど懲りまくっていたのが太田裕司(東京藝術大学大学院)の「半馬博物館」です。上半身が鳥、下半身が馬である生物「半馬」が、いかにも伝説として地域に根付き、その真相が暴かれたように証拠品を並べています。

造形技術もさることながらコンセプトとしてしっかりしています。ひとつひとつの作品はうさん臭いのです。しかし、それらがまとまると本当にあるかもしれないと思わせられるが、本当に楽しいと思います。鳴き声まであったのにはビックリしました。

いない いない GO!

その他の作品も個性的でたいへんおもしろいと思います。そして、ここまで作りあげるには、かなりの苦労があったと思われます。ただ、若い人たちは、苦労した分だけ確実に成長する(これは不確かでないことです)ので、今後がますます楽しみだと思います。

※相模原市市民ギャラリー(2010年7月31日~2010年8月22日)

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